「陰口引き出し王」水曜日のダウンタウン


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水曜日のダウンタウン「陰口引き出し王決定戦」を観て、面白かったので感想をいくつか呟きました。

それをまとめてみました。

(呟き自体はさらに細かい話を書いたツリーになっています。)

 

「皆を(出演者と番組側のみ)傷付ける笑い」

了承したからと言って…という理論だと、それをAV出演強要問題とかと重ね合わせる事は出来なくも無いですが。ただそれに関しては、あくまで「お笑い」というジャンルで行われる事の許容範囲だと、大衆の空気的に(つまりおそらく、SNSでの反応だけをデータとしているわけではないと思う。)は見なされているから、このぐらいの話題になり方なんだろうなと思います。

 

視聴者側に、マイノリティとして境遇に共感する要素を、省いていると思う。芸人さんに思い入れを持って見ていた場合に「可哀想」ってなったり、ちょうどお酒の席で自分の陰口を聞いてしまった人がそれを思い出したり、そういう感覚は抱くかもしれませんが、そのレベルの被害者意識とそれを引き起こさせた演出は、意地悪な視点ではあるけど、明確に「差別」では無い。数年前の水曜日のダウンタウンは「歯がない高齢男性」や「ロケ中に急に絡んでくる素人」等を、こちらに危害を加えてくるヤバい人扱いし、ホラー感覚でエンタメにしていて視聴者含め盛り上がっていましたが、そっちの方が明確に「差別」。(そういう演技のエキストラだったり、「ヤバい人」達がこの番組を見て「差別されている」と声を上げなさそうだから炎上しにくい構造だとも思います。)

 

 

仕掛け人が傷付くシステム

1番傷付いているであろう役割が仕掛け人である、とわかりやすく提示してあるから「ドッキリ企画そのものが良くない」という批判のされ方になっていないと思います。あと、その仕組みなので、仕掛け人が傷付いてないという態度を綺麗に取れれば取れるほど、炎上しにくい形になっています。竹山さんはむしろ、露悪的に振る舞う事でヘイトが集まるのを分散させていたとも捉えられる。そして、番組側はそれを構成として最初に持ってきてるから、ちょっと炎上させたがってる意図も見受けられます。

 

仕掛け人に同情したら陰口を言った方に石を投げれるし、陰口をチクられてかわいそうだと思ったのなら普段からそういう振る舞いなのであろう仕掛け人に石を投げれるし、その双方どちらにも嫌悪したのならこれを企画した番組側に石を投げれる。皆が平等に一定範囲傷付いている(視聴者も胸糞感を少なからず覚えている)これは状態として「誰も傷付いていない」にかなり近い。

 

 

永野の「あの顔」が好き

そしてそれらを踏まえると、やっぱり永野さんのあのリアクションが素晴らしかったと思います。

「あの顔」によって、ネタなのか、マジなのか、をどちらにも捉えられるように施していると思います。

 

永野さんの球種として「あの顔」よくやってる。

なんなら「殺人鬼みたいな顔付き」と、よく自虐気味にネタにしています。

 

 

今回も、その伝家の宝刀が出た って認識です。

 

 

永野さんは他の人達よりも、後輩へのダメ出しがネタ的な部分への言及になってる瞬間が、けっこうあったように思います。それと、3千円置いてくやつとかも、自分が「どう思われているか」を把握しながらも、絶妙なありえない金額。後輩に、一発屋から人気無くなってきてるって言われるんだろうな…ってちょっとわかってる感じと、さらに視聴者にも「永野かよw」みたいに思われてるのを前提で、その周囲のイメージの中で引き起こせる衝撃映像度数を上げよう、と試みているんじゃないかなと感じます。竹山さんと真逆のアプローチ。

 

個人的な印象ですが、永野さんは常にそういう「掴ませなさ」を意識して振る舞っていると思います。「カルト芸人」「一発屋芸人」「すべり芸人」「センス芸人」の間を、振り子のように何度も何度も行ったり来たり。

 

ちなみに、永野さんについて、以前呟いたものや書いたnoteです。こちらでは、もっと永野さんの芸風について考えて書いてみています。もしよかったら、こちらも。

 

 

 

 

竹山さんの「傷付きを見せないプロ意識」と

永野さんの「傷付きを煽って受けるプロ意識」とで

観た後の、胸糞感が増幅したのだと感じます。

そして、という事は…

 

 

その間に挟まれている、堤下さんと、小堀さんのリアクションが、けっこう傷付きとして深そう。

 

堤下さんは、ご認識の通りここ最近に3度目の交通事故を引き起こしていて、それも少し番組と関連付けて話題になっていましたが、個人的にはこの番組がどうこうとかではなく(ただそういう感想が上がるであろうとわかってたのに放送したのは凄い)堤下さん自体が、「いじられ芸」としてそこまでタフネスじゃないんじゃないかな?そもそも。と感じます。矢継ぎ早なツッコミは上手いと思うけど、「いじるいじられる」というプロレス的な関係構築は、我が家の杉山さんの方が、メンタルとしては出来上がっていると感じます。(それと板倉さんも、今の方向性のキャラになっていかない選択肢もあったとは思うので、これはずっと、コンビバランスの問題なんじゃないかな…と勝手ながら思っています。ネタ以外のいじられ要素も含めたタレント性みたいな部分をかなり堤下さんに依存している形態だったという露呈。)

 

小堀さんは、関西地域で局地的に高まったカリスマ性と、その脱却を東京進出的な流れに組み込めなかった事による、反動としてのクズ芸人キャラを、本人の精神的な強度含めて整えきれてないまま、ここまで来てしまったという感触があります。鈴木もぐらさんのような完成されたクズ芸人キャラでもなく、関西の楽屋裏的なニュアンスから外に出せるようなクオリティに達しているわけではないと思います。ここである種振り切れば、中山功太さんのような、逆説的なカリスマ性を生むことも出来たのかもしれませんが、いかんせん漫才という芸能との折り合いが難しく、単純に中途半端なポジションになっているから、関西以外の芸人さんに、社会人として舐められてしまっているのではないでしょうか?(そして、それを1番いじっていたしずる村上さんも、コンビとして池田さんがKAƵMA化した事によって、実は修二さんと似たような状態になっているのかな…と発言を聞いてて勝手に思いました。)

 

水曜日のダウンタウン全部台本説

 

今回の企画で、単純に拒絶感を抱いた視聴者もTLを眺めてると多かったなと思ったのですが、同時に、この番組のコンセプトを把握している人の中には「台本があると信じたい」「どうせこれもヤラセ」「そういう演出だと思って見ると笑える」「みんな信じ過ぎ」「台本だとしても気分悪い」というような感想もチラホラ見受けられました。

 

どういう風にこういう企画が作られているのかわかりませんが、見ていて何となく感じるのは、台本というより、出ている芸人さんの見られている意識に、ある程度任せているんじゃないかな?とむしろ感じます。そのセッティングまではしっかり行っているんだけど、ロンハーほど完璧に騙そうとしていないし、めちゃイケやモニタリングほどお約束的な着地を目指していない気がします。「ドッキリが成立するかのドキュメンタリー」という感じ。

 

以前、そういう観点で考えた水曜日のダウンタウン関連の呟きもあります。

 

落とし穴に落ちたのに一向にネタばらしが来ないまま日が暮れたら正気じゃいられない説

 

おぼん・こぼんTHE FINAL

 

その上で、今回は上記した呟きの内容よりも、さらに内側に小規模で、しかも確実に傷付けにいってるコンセプトなので、後味悪く感じる人が多かったのかもしれません。ただ個人的には、熱心に観ている人ほど追体験的になるものだと思うので、たぶん居酒屋とかで実際に上司の悪口を仲間内で話してるぐらいの環境で、そこに設置されている大型テレビに流れてる映像として、適当に流し見たらめちゃくちゃちょうど良い面白さだと思いました。話題になってるから、TVerで見逃し配信を探して確認する、ぐらいの温度でちゃんと見ると、凹んだりムカついたりする可能性が高くなる面白さだと思いました。

 

以上です。面白かったです。第二弾見たいです。